「糊殺し加工」とは?塗装マスキングにおけるメリットと当社の加工事例をご紹介!

本記事では、糊殺し加工の物理的な仕組みや塗装現場にもたらす劇的なメリットをプロの視点で解説。さらに、型代不要のカッティングプロッター試作から、現場の作業動線(ヘラ等の道具)や残留テンションまで計算し尽くした辻紙工業(マスキング・表面保護 課題解決ナビ)独自の「引き算設計」アプローチ、およびホイールアーチやコネクター保護などの具体的な導入事例までを詳しくご紹介します。
糊殺し加工(部分非粘着化)とは?
糊殺し加工とは、テープやフィルムの粘着面のうち、特定の狙った一部分だけの接着力を意図的に失活(非粘着化)させる精密加工技術のことを指します。
製造業における塗装工程の現場において、粘着テープやフィルムの存在は不可欠です。しかし、全面に均一な粘着力を持つ市販のロールテープをそのまま使用すると、作業性の低下やワークの損傷を招くケースが少なくありません。こうした現場の課題を物理的な設計アプローチによって解決する加工技術が、「糊殺し加工(部分非粘着化加工)」です。
糊殺し加工の基本的な仕組みと物理的原理
粘着テープやフィルムの特定の範囲を非粘着化する「糊殺し加工」には、物理的なアプローチとして主に「素材によるマスキング(被覆)」と「粘着剤の印刷制御(接着力の失活)」という2種類の手法が存在します。現場で求められる製品条件やコスト、生産数量に応じてこれらを最適に使い分けることで、理想的な部分非粘着面を形成します。
1. 素材によるマスキング技術
もっとも一般的であり、受託表面処理や自動車部品の塗装現場において極めて高い信頼性を誇るのが、素材を貼り合わせることで粘着面を物理的に覆い隠す(被覆する)手法です。 全面に粘着剤が塗布されたベーステープの上から、非粘着の極薄フィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン、PETなど)やラミネート(貼り合わせ)によって、粘着剤の露出を完全に遮断します 。 また、このほかにも、ハーフカットにより、離型紙を残した状態で、マスキングをすることによる糊殺しを行うこともあります。
2. 粘着剤の印刷制御(中央部分の失活)技術
もう一方は、基材(テープのベース)に対して粘着剤を塗布・成形する川上の段階から制御を行い、特定のパターン形状(中央部分など)のみ接着力を失活させる、あるいは粘着剤を塗布しない手法です 。 製品幅の中央部や端部など、あえて粘着させたくない部分(ドライセンターやドライエッジ)を狙い通りに非粘着化させます 。これにより、ハーフカット品を台紙から剥がす際のきっかけ(タブ)を形成したり、複雑な3D形状のアール(湾曲部)へ貼り付ける際に、意図しない場所へベタベタとくっついてしまう作業性の悪さを根本から解消したりすることが可能になります 。
工業用粘着テープ・フィルムにおける部分非粘着化の必要性
なぜ、日本のモノづくり、とりわけ自動車部品や電子機器、各種機械・装置の塗装・表面保護工程において、この部分非粘着化(糊殺し)技術が必要とされるのでしょうか。その理由は、現場における「極限までのタクトタイム短縮」と「属人化を排除した品質保証」の両立にあります。
市販のロールテープをそのまま複雑な3D形状のワークに貼り付ける場合、作業者は指先で粘着面をコントロールしながら、意図しない場所へのベタつきを防ぐために余計な神経と時間を使うことになります。
さらに、塗装や表面処理が完了した後の「剥がす(再剥離)」動作においても、全面粘着では引き剥がすために強い力が必要となり、作業性の低下や被着体の下地塗装を一緒に剥ぎ取ってしまったりする製品不良のリスクを抱えます。テープの端部や中央部にあらかじめ糊殺し加工を行うことで、これらの施工時・剥離時における物理的なストレスと外観品質不良のリスクを、根本的な構造設計によって、排除することが可能となるのです。
従来のロールテープによる塗装マスキングの限界と現場の課題
貼り直し時のベタつきと剥離の重さ(タクトタイムのボトルネック)
全面が均一な強粘着面である汎用ロールテープは、施工タクトタイムを遅延させる要因を多く含んでいます 。
- 位置決めの難しさによる時間浪費:目印となるガイドのないワークに対し、正確な見切りライン(塗装の境目)を狙う際、強粘着面が意図しない場所へベタベタとくっつきます 。このため貼り直し作業が多発し、位置調整だけで多大な時間を浪費します。
- 剥離時の時間ロスと製品不良リスク:塗装・焼付後の剥がし工程でも、全面粘着仕様は作業性低下の要因となります 。剥離動作そのものに労力がかかり、タクトタイムを増大させるだけでなく、無理に引っ張ることでワークが歪んだり、下地塗装を一緒に剥ぎ取ったりするリスクを抱えます 。
3D曲面への追従不足による「反発・剥がれ」と見切りラインの精度不良
汎用ロールテープの最大の弱点は、三次元の立体的な曲面や深い溝の側面に対する、物理的な追従性の限界にあります 。
- 熱処理時の浮き・剥がれ(残留テンション):弓なり形状に直線的なテープを無理に引っ張って這わせると、基材に過度なテンション(引っ張る力)が残留します 。これが160度前後の焼付工程などの熱負荷によって顕在化すると、元の形状に収縮しようとする「反発」が起き、端部の浮きや剥がれ、塗料の内部への吹き込みを招きます 。
- 見切り不良と手直し工数の発生:テープの反発やシワは、見切りラインの直線精度を著しく損ないます 。塗料のはみ出し不良が発生すると、後工程での研ぎ出しや再補修のために、当初の想定を遥かに超える費用と手直し工数が必要となり、歩留まりを悪化させる最大の原因となります 。
マスキング・表面保護 課題解決ナビ(辻紙工業)だからこそ可能な「糊殺し加工」とマスキング設計
市販のロールテープをそのまま使用するマスキングに対し、辻紙工業が運営する「マスキング・表面保護 課題解決ナビ」では、製造現場のリアルな課題を設計・加工の力で根本から解決するソリューションを提供しています 。大量生産・単純加工のみに特化している競合他社とは異なり 、私たちは「糊殺し加工」や独自の精密設計を駆使し、図面には現れない現場のリアルな条件を反映した「川上からの課題解決型アプローチ」を徹底しています 。
【強み1】カッティングプロッターによる「型代無料・100個以下の極小ロット」対応
多くの抜き加工会社では型を必要とする「トムソン抜き」が主流ですが、当ナビでは最新のカッティングプロッターを用いた「型不要加工」の体制を確立しています 。これにより、試作や小ロット生産におけるスピードとコストの最適化を具現化しております。
特注形状のマスキング材を製作する場合、通常は初期費用として数万円の金型代が発生するため、試作段階や小ロット生産において大きな費用負担となります。しかし、私たちはプロッターによるデジタルダイカット技術を保有しているため、高額な初期費用を一切かけることなく、指定データ通りの精密なカットが可能です 。
この「型代無料」の強みを活かすことで、100個以下といった極小ロットの試作開発や短納期案件にも柔軟に対応いたします 。効果検証が不十分な段階でのイニシャルコスト負担というボトルネックを完全に解消し、スムーズな工程改善のスタートを後押しいたします。
【強み2】現場の作業動線や既存の道具(ヘラ等)を前提とした泥臭いサンプリング
私たちは、単にお客様から支給された図面通りにテープを切り出すだけの加工メーカーではありません 。実際の製造現場で作業者が「どのように手を動かし、何の道具を使っているか」を観察・ヒアリングし、施工動線を前提とした設計に落とし込んでいます。
図面が存在しない複雑な3D形状のワークであれば、実際の被着体をお借りするか、あるいは私たちがお客様工場へと赴き、現物からのサンプリング(型取り)を泥臭く行います 。このとき、現場の作業者が「ヘラ」を使用してテープを押し込んでいるなど、慣れ親しんだ手順や既存の道具を徹底的に確認します。
例えば、深い溝の側面まで確実に密着させなければならないマスキング案件において、私たちは「ヘラで押し込んで貼る」という実際の施工時の手の動きをあらかじめ計算に入れた独自の仕様を設計・提案いたします。これにより、現場の作業手順を一切変えることなく、塗料のはみ出しを防ぐ確実な外観品質向上と工数削減を同時に達成することが可能になります。
【強み3】物理的なテンション(引っ張る力)を計算してシワ・反発を防ぐ「力を逃がす」形状設計
三次元の立体的な曲面や弓なりの形状に対して直線的なテープを這わせると、基材に無理なテンション(引っ張る力)がかかり、熱処理時の反発やシワによる剥がれを引き起こします。当ナビでは、この物理的な残留テンションを計算し、あらかじめ設計段階で制御する高度な形状アプローチを行っています。
ワークの形状に合わせてただ均一にダイカットするのではなく、テープを折り曲げたり湾曲部に追従させたりした際に、最も強く物理的負荷がかかる箇所を長年の知見からピンポイントで見極めます。そして、反発の原因となるその特定の部位に対して、あらかじめ設計段階で「三角の切り込み(切り欠き)」を正確に配置します。
この「力を適切に逃がす」独自の形状設計により、作業者が無理にテープを引っ張ることなく、ワークにジャストフィットさせながら無駄な力をかけずに美しく貼り付けられる仕様を実現いたします。このノウハウにより、160度前後の高温焼付塗装工程を通過しても、端部からの浮きや剥がれ、塗料の吹き込みを完璧に防ぐことが可能です 。
【強み4】見切りラインの重要度に応じたメリハリのある「引き算設計」によるコスト最適化
すべての部位に対して完璧で過剰なスペックを求めることは、資材コストの増大と現場の作業性悪化(位置決めの複雑化)を招きます。当ナビでは、ワークにおける各部位の「機能的な重要度」を見極め、あえて無駄な要素をそぎ落とす「引き算設計」を重要視しています。
精緻な外観品質が要求される「見切りライン(塗装の境目)」付近や、裏側へ確実に折り曲げてシールしなければならない重要な部分には、当社の技術によって特注形状に適応したマスキング材を設計・製作いたします。一方で、他の部品によって最終的に覆われて隠れてしまう部位や、単に塗料の付着を防ぐ目的だけの中央部などに関しては、「ただ重なり合っていれば問題ない」と割り切った簡素な設計を提案いたします。
このメリハリのある柔軟な設計思想により、過剰スペックによる無駄な資材コストの発生を徹底的に抑え込みます。同時に、現場の作業者にとっても「どこに一番注意して位置決めすべきか」が視覚的に明確になるため、現場の施工迷いをなくし、養生工数の大幅な削減へと繋がります。
【強み5】スプレー塗装時の「風圧」や「熱条件」まで想定した高度な素材選定力
マスキング材が本来の保護性能を発揮するためには、静的な形状寸法だけでなく、実際の塗装ライン上で生じる動的な負荷や環境要因に耐えうる素材選定(マテリアル・コンサルティング)が不可欠です 。
例えば、自動スプレー塗装ラインにおいては、高圧で吹き付けられる塗料やエアの風圧によって、マスキングフィルムが激しく暴れてしまうことがあります。意図しない隙間から塗料が内部へ吹き込んでしまったり、塗装面にフィルムが付着してしまう、というトラブルが頻発します。私たちは、このようなスプレー塗装時の強い風圧条件をあらかじめ想定し、適度な厚みとコシ(腰の強さ)を備え、熱処理後でも糊残りのない高品質なポリエチレン(PE)フィルムやポリプロピレン(PP)、PETフィルムを案件ごとに最適選定いたします 。
また、160度を超える過酷な高温焼付工程であれば塩ビテープや特殊耐熱紙を組み合わせるなど 、世界的な有力テープメーカー(テサテープ、ニチバン、3Mなど)の機能性材料を豊富に自社在庫として保有している当社の知見を活かし 、工程条件を確実にクリアする最適なハイブリッド仕様をご提案いたします。
「糊殺し加工」マスキング事例紹介
塗装マスキング用糊殺しテープの導入により、タクトタイム短縮を実現!

当社からは、対象となるホイールアーチの形状が円弧になっている特性に着目し、粘着面をあえて狭く設計することで、アール部分への貼り付け時にもくっつきにくく、剥がしやすい操作性を実現する仕様をご提案しました 。マスキング材は、独自のロール糊殺し加工技術を施して製作いたしました。製品幅の中央部分にあらかじめ糊殺し加工を施して粘着面積を適正に減らすことで、現場での貼りやすさと剥がしやすさを格段に高めています 。
コネクター保護用糊殺し加工フィルム

糊殺し加工、およびミシン目加工を施して製作された特注の表面保護シートです。PEテープとPPフィルムを組み合わせた素材を採用し、テープの中央部分の接着力をあえて失活させる「糊殺し加工」を施している点が最大の特長です。 この粘着力がない中央部分を折り曲げることで、部品にジャストフィットする袋状の保護フィルムを形成します。さらに、ロール状の資材から決まった長さでスムーズに手切りできるよう、等間隔にミシン目加工を施すなど、現場での使いやすさにも配慮した仕様となっています。
特注形状の糊殺し加工・マスキング材のことなら辻紙工業(マスキング・表面保護 課題解決ナビ)にお任せください
辻紙工業が運営する「マスキング・表面保護 課題解決ナビ」では、これまで自動車部品、電子機器、金属表面処理をはじめとする国内の多様な製造業各社様に対し、工程改善に直結する専用マスキング資材をご提案・納品してまいりました。 「現場での貼り付け工数を削減したい」「剥離時の糊残りや製品キズを無くしたい」など、現在抱えられている現場のお悩みをそのまま私たちにお聞かせください。実際の現場の作業手順に寄り添い、歩留まり向上とタクトタイム短縮を約束する最適なソリューションをご提案いたします。まずはお気軽な技術相談・試作開発のご依頼をお待ちしております。
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